先日リリース情報を発表しました、平井 堅の配信シングル「怪物さん feat.あいみょん」(3月27日(金)発売)に関して
あいみょんさんとのコラボレーションという大きな話題性に加え、タイトル「怪物さん」や歌詞に関して多数のお問い合わせをいただきありがとうございます。

今週3月27日(金)の発売日から全国のラジオでのオンエアと歌詞の公開もスタートします!
本日は一足先にオフィシャルライナーノーツを公開しますので是非ご覧ください。
<怪物さん feat.あいみょん オフィシャルライナーノーツ text by 島田諭>
一度目にしたら、一度耳にしたら忘れないと断言してもいいキャッチーなタイトル。なんたって「怪物さん」である。「怪物」であるにもかかわらず「さん」なのである。しかもこの平井堅の新曲、「怪物さん」というフレーズだけでも十分にキャッチーなんだけれど、正式なタイトルは「怪物さん feat.あいみょん」。そう、あいみょん。なんと、あいみょん。もはや存在自体がキャッチーなあいみょん。やっぱり、忘れようがないタイトルなのだ。

ただこれ、逆をいえば、絶対に忘れさせないタイトルを平井堅が用意したということであり、その上で、いまをときめく新しいポップ・スターとのコラボレーションを実現させ、さらにいうと、曲の冒頭。レトロな電子音によるイントロも強烈な印象を聴き手にもたらすもので、ポップならではの暴力性とはタイトルも含めてまさにこのこと。だからそこに、4分4秒の新曲を最初から最後まで楽しんでもらいたい、楽しんでもらえるはずだという平井堅の欲求と自信をどうしても感じずにはいられないのである。

作詞・作曲は平井堅。2007年の「哀歌(エレジー)」や2018年の「知らないんでしょ?」でもチャレンジした女性目線による歌詞がポイントで、そこには成就不可能というべき片想いをしている主人公の言葉、というか、心の叫びがずらっと並んでいる。ところがそこに、意外というべきか不思議というべきか、平井堅特有の湿度の高さや絶望的な暗さが感じられないのである。どちらかというとドライで、そして、だからこそ生じる解釈の自由度。この質感と余白の存在はあいみょんの作家性だったりするわけだけど、彼女と一緒に歌っているから自然とそうなった、というわけではないはず。今回のコラボレーションにおける平井堅のプロデュース・パワーが作用した結果のひとつ、なのではないか。

この歌のクライマックスはサビのあと。そこに至るまで歌われてきた、好きで好きでたまらない「あなた」に対する図々しいお願いや憎まれ口、第三者からすれば面倒くさいだけの自暴自棄や自己嫌悪を短めのセンテンスに区切ったふたりのスピーディな掛け合いが、サビから雪崩込むように展開していくのである。ここ、この上なくスリリングで、もちろん、最後のフレーズだけは一緒に歌うという掛け合いのお約束ごともあって、その「いなくなれ」で重なったときの平井堅とあいみょんの歌声のあまりのすばらしさと気持ちよさに、歓天喜地!

思えばこのふたり、以前から相思相愛だった。あいみょんはもともと平井堅の熱心なリスナーであったし、彼女がブレイクする前の2017年にゲスト出演したあるラジオ番組で、最近気になるアーティストは誰かと訊かれた平井堅はあいみょんの名前を挙げていた。おまけに、それに大喜びしたあいみょんがその同じラジオ番組に出演した際、平井堅に対する感謝の意を手紙にしたためて朗読したというエピソードもあって、だから、今回のコラボレーションをいちばん喜んでいるのは当の本人たち、平井堅とあいみょんという気がする。

しかも、相性抜群のふたりが歌っているのは恋愛賛歌なのだからなんとも微笑ましい。いやいやいや、救いのない片想いをしている女性を主人公にした歌が恋愛讃歌なのかというツッコミはもちろんあるはずで、ただ、この歌のオチはあきらかに複数の解釈が可能だ。だから、それ次第で掴み抜群のタイトルはもちろん、全体の歌詞の受け止め方も変わってくるのだ。個人的には、やさしくて可愛らしい歌であるように感じた。どうだろうか。